2020年ESG経営講演会 ダイジェスト

『ESG潮流の中、今こそSDGsを経営に生かす』

四谷区民ホール2020年2月7日(金)、東京都新宿区の四谷区民ホールにて、第14回目となるエコステージ協会主催の講演会が開催された。「ESG潮流の中、今こそSDGsを経営に生かす」と題し、第一部ではサステナブル投資や企業イノベーション支援の視点から、SDGs の現状と企業の取り組みについて講演が行われ、第二部では大手企業の先進的な活動や、中小企業のエコステージ導入による優秀事例を紹介。会場はほぼ満席で、多くの来場者が熱心に聞き入った。

開会挨拶
エコステージ協会 全国理事
小山 富士雄

企業にとってのSDGsの取り組みは、いかに経営に生かしていくかが問われている段階と語り、今回の講演会の趣旨を説明。講演会で紹介する先進的な取り組み事例は、多くの企業にとってヒントになると語った。また、エコステージでは、企業の環境経営を支援する日常的な業務だけでなく、今回の講演会やセミナーを通じて積極的に情報を発信していくと伝え、開会を宣言した。

小山 富士雄
《基調講演》
「新たなステージを迎えるESG投資とSDGs:企業にとっての意義」
日本サステナブル投資フォーラム 会長
荒井 勝

投資家の目から見たSDGsへの企業の取り組みについて解説。日本企業の取り組み姿勢の変化を具体的な事例を挙げて紹介するとともに、ESG投資が本格化した背景と経緯を説明した。PRI(国連責任投資原則)発足以降、企業の評価軸が変わり、「投資家も財務結果だけでなく、結果を生み出すまでの活動を評価するようになり、ESG投資が増えてきた」と指摘。今後はサプライチェーンでの取り組みが課題となり、「情報開示や対外的なアピールが企業に求められる」と語った。

荒井 勝氏
「SDGs起点でビジネスを創出する!」
Japan Innovation Network ディレクター
小原 愛

企業のイノベーションを支援する立場から、SDGs起点のビジネスについて講演を行った。イノベーションは、新しい価値を世の中に生み出し、SDGsの取り組みに深く関連していると説明。「17ゴールだけでなく、169のターゲット、232の指標にまで目を向けると『創りたい未来』が明確になり、ビジネス機会が見えてくる」と解説した。具体的な事例を挙げながら、「大企業と中小企業がタッグを組み、それぞれの強みを発揮することで、SDGsの取り組みは加速する」と語った。

小原 愛氏
「新しいESG戦略と具体的取り組み」
花王株式会社 ESG戦略部 部長
畑中 晴雄

環境活動を積極的に行ってきた花王の取り組みについて、ESG戦略部の畑中氏が紹介した。130年前の高級化粧石鹸をルーツに、豊かな生活文化の実現を目指す同社では、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表。海洋ゴミゼロを目指した詰替え・付替え製品の取り組み事例に触れ、「ESGを経営の根幹に据えることで、プラスチック容器の完全リサイクル化、新たな原料の開発に取り組み、戦略から実践の段階に移っている」と語った。

畑中 晴雄氏
「エコステージ活動の活用による『モノづくり』と『コトづくり』」
株式会社富田製作所 代表取締役社長
富田 英雄

エコステージを通してブランドイメージの向上につなげた富田製作所の取り組みについて、代表取締役社長の富田氏が発表した。大型建機車両部品や高層ビル向け大型鋼管の製造を行う同社は、板金世界一を目指し、企業体質の改善を模索。職人気質のモノづくりから脱却し、品質向上やガバナンス強化によって外部評価を高め、TV番組にも積極的に出演。「グローバル化やSDGsへの対応を行う上では、商品以外のソフト的なイメージ、問題解決の仕組みが求められている」と語った。

<優秀事例に学ぶ>
富田 英雄氏
「ポジティブSDGs成功への7つの鍵」
株式会社弘久社 代表取締役社長
平野 芳久

エコステージのCSR経営認証を取得し、CSV事業に取り組む弘久社の事例を、代表取締役社長の平野氏が発表した。印刷業を営む同社では、本業と社会貢献の相乗効果を目指し、25年間にわたりCSV事業を実践。2030年までにSDGsに適応した売上が60%以上になるよう新しいビジネスの創造を目標に掲げ、印刷業の強みを生かした小冊子や絵本づくりで社会貢献活動を展開。「中小企業だからこそ思い切った提案ができる。活動を伴った情報提供を積極的に行いたい」と語った。

平野 芳久氏
「ステージアップを重ねて掴んだTQM奨励賞とSDGsへの道」
株式会社丸開鉄工 代表取締役社長
丸開 悟

エコステージによって着実に企業体質改善を図った丸開鉄工の取り組みについて、代表取締役社長の丸開氏が発表した。建設機械部品や産業機械部品の製造を行う同社は、グループエコステージによって環境マネジメントシステムを導入し、PDCAサイクルを構築することでTQM活動にまで発展させ、2017年には日科技連の日本品質奨励賞を受賞。「今まで取り組んできた多くの活動がSDGsのゴールに合致している。エコステージ、TQM活動の延長線上に、SDGsへの道がある」と語った。

丸開 悟氏
 
 

「ご来場者アンケート」より

-ご記入いただいた多数の回答の中から、いくつかご紹介します-
基調講演 「新たなステージを迎えるESG投資とSDGs:企業にとっての意義」(荒井 勝氏)に関して
  • 具体的なデータと実際の体験を交えてのお話し、とてもわかり易く説得力がありました。
  • ESG投資の現状と今後の動向について、理解することができました。
  • 日本企業もESGに対する考え方・取組みが変わってきており、当社も真剣に意識しなければと実感した。
「SDGs起点でビジネスを創出する!」(小原 愛氏)に関して
  • SDGsはどんなふうに料理しても大丈夫!の言葉に気が楽になりました。
  • SDGsとビジネスのつながりを非常に明確に説明いただき、理解が進んだ。
  • SDGsに関し、これまでのもやもやした点がクリアになり、霧が晴れたようだ。
「新しいESG戦略と具体的取り組み」(畑中 晴雄氏)に関して
  • 説明が詳細にわたり、ESGに対する考え方、社内検討プロセスが非常に参考になった。
  • ESG社内推進体制が参考になりました。
  • 大企業の活動事例ではあるが、中小にも当てはまる点が多々あり、参考になった。
優秀事例に学ぶ 「エコステージ活動の活用による『モノづくり』と『コトづくり」(富田 英雄氏)に関して
  • 具体的でわかり易かった。スカイツリーの太い鋼芯の製作風景に感動した。
  • ビッグプロジェクトの事例と共に、SWOT分析などを通じた経営手法が参考になった。
  • しっかりした体制を整備することで大きな仕事につながっている点、同業者として非常に参考になった。
優秀事例に学ぶ「ポジティブSDGs成功への7つの鍵」(平野 芳久氏)に関して
  • 日本の課題を大きく広く捉え、そこからポジティブSDGsの展開が面白い。7つの鍵は非常に有益と感じる。
  • ポジティブではないSDGsは、取り組む意味が無いとの考え方に共感できる。
  • 示唆に富む話で興味深い、また、ご自身で悩んだことが良く分かった。
優秀事例に学ぶ「ステージアップを重ねて掴んだTQM奨励賞とSDGsへの道」(丸開 悟氏)に関して
  • ISOよりエコステージを選んだ決断の良さに感銘した。非常に説得力がある説明でした。
  • 少人数の企業でもできる事柄に着目し、活動することでステージ3認証に至っている点に納得した。
  • 社長の指導力による会社の変遷が良くわかりました。SDGsへの道、人材育成、可視化が特に良かった。

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