2018年環境経営講演会 ダイジェスト

戦略的環境マネジメントによる企業目標の達成
― バックキャスティング手法による実現 ―

2018年2月16日(金)、東京都新宿区・四谷区民ホールにて、第12回目となるエコステージ協会主催の環境経営講演会が開催された。「戦略的環境マネジメントによる企業目標の達成」をテーマに、第一部では世界的に注目されるSDGs、企業経営に直結するイノベーションをテーマに講演が行われ、第二部ではエコステージ導入による多様な優秀事例、エコステージの最新動向が紹介された。識者や企業担当者から経営改善のヒントが数多く紹介され、多くの来場者が熱心に聞き入った。

<Ⅰ.開会挨拶>
エコステージ協会 理事長
古賀 剛志

エコステージ協会は、2013年以降、経済産業省などが行う企業向けの支援策を積極的に紹介、導入することにより大きな成果が得られたと語り、環境マネジメントシステム(EMS)が中小企業経営の礎になってきたと説明。今回のテーマの趣旨とプログラムの内容を紹介し、開会を宣言した。

古賀 剛志
<Ⅱ.来賓挨拶>
経済産業省 関東経済産業局
資源エネルギー環境部 資源エネルギー環境課 総合エネルギー広報室長
高崎 宏和

中小企業経営を支援する立場から、環境経営の視点・ツールの具体策や取り組み状況について紹介。多くの中小企業ではさまざまな経営課題を抱え、「マネジメントシステムの改善ツールとしてEMSを導入することで、経営改善と環境負荷低減の両立が図れる」と指摘。関東経済産業局では「経営改善テクニック集」などのノウハウや情報の提供、省エネルギー設備導入や投資促進のための補助金などを通じ、今後も中小企業の環境経営を支援していくと語った。

高崎 宏和氏
<Ⅲ.来賓挨拶>
富士ゼロックス株式会社 元社長/国連グローバル・コンパクト ボードメンバー
有馬 利男

国連グローバル・コンパクトのボードメンバーとしての経験から、SDGsが果たす役割を紹介。企業の社会的責任についての意識が変わり、「環境、社会、ガバナンスの3つの視点で経営を行う企業がサステナブルであると評価される」と語った。また、日本をリードする企業の経営層でも10年後のビジネスモデルが不透明と感じていると指摘し、未来の目標を想定してそこから現在すべきことを考える、バックキャスティング手法が有効であると強調した。

有馬 利男氏
<Ⅳ.基調講演>
「SDGsを踏まえた戦略的環境経営」
エコステージ協会 全国理事・東京地区第三者評価委員長/
NPO法人 日本環境管理監査人協会 理事長/東工大非常勤講師
小山 富士雄

パリ協定など大局的な見地からエネルギーと企業活動の関係に触れ、中小企業に求められる環境経営について解説。環境マネジメントシステムは適合性より有効性が重視され、コンサルティングと評価が一体化しているエコステージは、「コンサルタントが経営者と話し合いを進めながら企業の立場で改善できる」とその特徴を語った。また、SDGsを見据えた中小企業のあり方として、「寄付やボランティアではなく事業活動を通じて社会貢献することが求められている」と強調した。

小山 富士雄
<Ⅴ.特別講演>
「大転換時代の流れとイノベーションの発想法」
国連大学名誉副学長/東京大学名誉教授/一般財団法人 持続性推進機構 理事長
安井 至

電力貯蔵、EVの普及など、地球温暖化に対応する世界の動向を、イノベーションという観点から解説。日本に必要なのはカイゼン型ではなく、転換型のイノベーションであると指摘し、「最先端が必ずしも価値ではなく、転換すること自体がイノベーションであるという発想が重要」と語った。日本と西洋における「正義」についての捉え方の比較など、文化的な背景にも言及し、「社会的課題を解決することが『正義』であると考える企業が勝ち抜ける社会が到来する」と将来を展望した。

安井 至氏
<Ⅵ.優秀事例に学ぶ①>
「セールスプロモーション屋とエコステージ」
株式会社KANKO 企画営業推進部 品質推進 マネージャー
谷岡 聡

店頭POPやノベルティなど企業のプロモーションの企画立案を行うKANKOの取り組みについて、品質管理担当の谷岡氏が発表した。クリエイティブ系や事務系など多様な社員がエコステージ委員会に参加し、遊び心あるリリースや改善意識を高めるチェアPOPなど、さまざまなツールを社員自ら発想。「社員個々の経験やスキルを活かし、企業の実態に合わせて柔軟に活動できた」と語った。

谷岡 聡氏
<Ⅵ.優秀事例に学ぶ②>
「全員参加で築き上げた企業体質改善活動の展開」
河野光学レンズ株式会社 秋田工場 品質管理課 課長
後藤 巧

光学レンズの一貫製造を行う河野光学レンズの取り組みについて、品質管理課の後藤氏が発表した。エコステージ導入以降、それまで工場長主導で行っていた改善活動が全員参加となり、全部門に浸透。認証取得以後も、小集団活動、5S活動、QC活動と段階的にステップアップし、「不良率低減を実現しただけでなく、高精度な新規分野へもチャレンジできる体質に変化した」と語った。

後藤 巧氏
<Ⅵ.優秀事例に学ぶ③>
「『エコステージ活動を通じて』社会貢献と人材育成を目指す」
カンパネ株式会社 代表取締役社長
鳥山 重之

関東圏を中心に給排水衛生設備の改修工事を行うカンパネの取り組みを、代表取締役社長の鳥山氏が発表した。協力会社も含めた「環境・安全・衛生」体制を構築し、5S活動からスタート。品質管理、情報セキュリティまで包含する統合マネジメントシステムへ進化させ、「今後はAIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入により仕事の効率化を図りたい」と語った。

鳥山 重之氏
<Ⅶ.閉会挨拶>
エコステージ協会 全国理事/全国事務局長
坂本 純章

製造業を中心にした認証組織の状況、TQM奨励賞をはじめとしたエコステージ導入企業の各種受賞状況、産業交流展など各種展示会への出展や公開講演会の実施状況を報告。ミャンマーにおける「植林プロジェクト」の現況にも触れ、エコステージ協会が今後も社会貢献を含め中小企業の経営を支援していくと語り、講演会を締めくくった。

坂本 純章
 
<当日会場内の模様>
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「2018年環境経営講演会」アンケート集計結果より

-来場者にご記入頂いた多数の回答の中から、いくつかご紹介します。(原文のまま)-
Q:基調講演(小山富士雄講演)に関して
  • 指標を持って活動することの重要性が分かりやすく説明されていた。
  • SWOT環境経営に対する概念がSDGs等により広がっていることを理解できた。
  • 化学物質管理はこれまでのハザードベースからリスクベースの管理になると言う点、日本社会が不得意とするところだろうと思います。
Q:特別講演(安井至講演)に関して
  • 自動車産業の抱えているフォーカスをズバリついていたので、自動車関連現在多忙ですが、先の不透明感も明確だった。
  • CO2対策の必要性、イノベーションの解釈の違和の理由が分かり面白かった。
  • 転換とは何か、また日本企業が苦手とする面を様々な事例で表現されており、理解することができた。
Q:優秀事例に学ぶ①(谷岡聡講演)に関して
  • 5S活動が素晴らしかった。また、化学物質の勉強にキャラクターを作って周知させるアイディアは素晴らしいと思いました。
  • 規模が大きくなく、かつファブレスな形態の企業様の事例ということで、なかなか触れることのできない内容でした。
  • 社内の評価基準の修正により理解しやすい形に変え、効果を出すことの有効性。
Q:優秀事例に学ぶ②(後藤巧講演)に関して
  • ステージ3を目指している企業活動が参考になった。間接業務の数値化参考になった。
  • エコステージ3までの道のりを全員で達成された内容で、とても良かった。効果金額設定も良い。
  • エコステージに関わることで、会社の利益にとっても良い結果になったことが良く分かり導入の障壁が下がったのではないかと思う。変化も劇的で驚かされた。
Q:優秀事例に学ぶ③(鳥山重之講演)に関して
  • エコ委員のメンバーをどんどん入れ替えることが参考になった。エコステージ2まで取られたノウハウ、エコステージを自然に行っている。
  • エコステージが経営全体に広がっているのが良い。統合マネジメントシステム。
  • 総合的に会社が変わることで、安心して仕事を任せられるような依頼が出てくる。良い方へ良い方へ変わっていくという例を示していただいた。具体的な活動の話はもう少し聞きたかった。
ご意見・ご要望・ご質問
  • SDGsは今後の企業経営のキーワードであり企業存続にとって必ず取り組むべきマストと認識。
  • 仕入れ販売部門に在籍しており、購入先様とのお付き合いもあります。中小の会社さんの環境システム構築の難しさを実感していましたので、優秀事例の講演は大変参考になりました。貴重な機会をいただき、ありがとうございました。
  • 業務の改善に困ったときに解決策の一つとして、エコステージの活動について知っておけてよかったです。様々な企業を巻き込んで活動が発展していって欲しいと思います。今後も注目していきたい。

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