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2017年環境経営講演会 ダイジェスト
サプライチェーンを強くするためのEMSの構築
― 持続可能な開発目標(SDGs)に基づく大企業との連携拡大による経営強化 ―
2017年2月10日(金)、東京都新宿区・四谷区民ホールにて、第11回目となるエコステージ協会主催の環境経営講演会が開催された。「サプライチェーンを強くするためのEMSの構築」をテーマに、第一部ではサプライチェーンマネジメント強化の事例や、今後の企業経営のキーワードとなるSDGsに関する講演が行われ、第二部ではエコステージ導入による多様な優秀事例、エコステージの最新動向が紹介された。4時間以上に及ぶ講演会となったが、多くの来場者が最後まで熱心に聞き入った。
<Ⅰ.開会挨拶>
エコステージ協会は、一昨年10周年を迎えたのを機に、大企業と中小企業の連携づくりに注力し、サプライチェーンマネジメントの構築の支援という新たなステップに入っていると語り、今回のテーマの趣旨を説明。エコステージ導入企業が日本品質奨励賞(日本科学技術連盟創設)を受賞するなど業界内での評価も高まる中、今回も幅広い優秀事例を揃えたと語り、開会を宣言した。

<Ⅱ.来賓挨拶>
資源エネルギー行政の立場から、環境視点による経営改善の現状やその支援策について紹介。節電・省エネ、生産工程の「モッタイナイ」改善(マテリアルフローコスト会計)に加え、環境マネジメントシステムの導入が企業に求められ、経営改善と環境負荷低減の両立が重要であると指摘。設備投資に関する支援策など、今後も行政は支援を継続し、積極的に情報発信していくと語った。

<Ⅲ.来賓挨拶>
有馬 利男氏
国連グローバル・コンパクトのボードメンバーとしての経験を踏まえ、国際社会共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)をはじめ、環境と経営にかかわる世界的な潮流について紹介した。日本でも2016年末にはSDGsの実施指針が決定するなど、具体的な施策が動き始めたと説明。今後は「企業が社会的な課題を解決する時、SDGsの取り組みは、新しいビジネスチャンスにもつながる」とビジネス界でも期待され、企業の持続的経営にも関わる重要なテーマになると語った。

<Ⅳ.基調講演>
協力企業会「みどり会」を組織し、サプライチェーンマネジメントを推進するコマツの取り組みについて、調達部長の奥田氏が紹介した。化学物質管理強化のために協力企業へのEMS認証取得を義務化したのを契機に、エコステージの導入が着実に進んだと説明。その根底には、欧米企業とは違う「時間と手間をかけてでも優良な協力企業を育てWIN-WINの関係を築く農耕民族型購買の方針がある」と調達方針の重要性を強調し、サプライチェーン全体がレベルアップしていると語った。

<Ⅴ.特別講演>
貧困、飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など17の目標が掲げられたSDGs(持続可能な開発目標)に、企業がどのように取り組むべきか、専門家の立場から解説した。すでにグローバル企業にとって調達基準の見直しが課題となり、今後は中小企業も影響を受けると予測。「17の目標には国際的に重視される社会課題がほとんど網羅され、政策的な優先順位も高まっている。そのため、バリューチェーンの活性化や事業展開をする際のヒントになりうる」と今後の展望を語った。

<Ⅵ.優秀事例に学ぶ>
ダンボール用品や木製パレットなど包装・物流のトータルサプライヤー、山岸の取り組みについて、代表取締役社長の下田氏が発表した。環境化学物質管理を重視し、主要仕入先企業に対しての勉強会も積極的に展開。「仕入先様も大切なお客様であるとの経営理念から、お客様と従業員に対して何が一番いいのかを考え、エコステージを導入。品質向上と環境改善の両立を図れた」と語った。

「エコステージステージアップによる環境経営強化」
"全員参加でお客様の期待を超える製品と安心を提供"
建設機械、産業機械の精密部品加工を行う富士精機の取り組みについて、工場長の前川氏が発表した。エコステージ1から2へステージアップする際、技術者の世代間格差に目を向け、全員参加で取り組む仕組みづくりを目標に改善活動を実施。「改善道場、改善ダービーなど従業員のやる気を高める独自の工夫を実施。生産性も向上し、自律神経を持った集団に成長できた」と語った。

「エコステージ全員参加で経営計画達成!」
電子部品の販売卸売業を主体に、太陽光発電やLEDなどのエコ商材も販売する和光電気の取り組みについて、経営企画室室長の小宮山氏が発表した。エコステージ導入当初から環境化学物質管理に取り組み、販売商社として売上拡大につながる改善(増やす改善)にも着手。「部門横断のプロジェクト体制で課題に取り組むなど多くの改善を果たし、新規市場開拓につながった」と語った。

「地域との信頼が社業を支える」
埼玉県で総合ビル管理を行う毎日興業の取り組みについて、代表取締役の男澤氏が発表した。経営の透明性を高めるためエコステージを導入し、イーリスの森の保全活動、大宮アルディージャの手話応援などの社会貢献活動が評価され、2016年に久喜市総合体育館のネーミングライツを取得。「地域やお客様からの信頼が高まり、障害者雇用がしやすくなるなど副次的効果も高まった」と語った。

「エコステージを軸とした人財育成による技能集団の構築」
高度な手作業のハンドレイアップ製法で高い評価のFRP専門メーカー、東雄技研の取り組みについて、代表取締役社長の菊地氏が発表した。若年技術者への技術伝承を目標に、エコステージを導入。熟練職人の技能を数値化するなど、課題や問題を明確に理解することで、若手技術者の技能も向上。「若手や女性社員の採用が増加した。世界に誇れる現代の名工を育てたい」と将来の抱負を語った。

<Ⅶ.閉会挨拶>
エコステージ認証の状況を紹介し、製造業を中心に認証取得企業が多く、ステージアップする例も増加していると報告した。認証取得した企業の中には、日本科学技術連盟の賞を受賞する企業も多く、エコステージ取得が経営管理や品質管理などの具体的成果につながっていると強調。今後も研修会や講演会を積極的に開催し、企業の経営をサポートしていくと宣言し、講演会を締めくくった。


「2017年環境経営講演会」アンケート集計結果より
-来場者にご記入頂いた多数の回答の中から、いくつかご紹介します。(原文のまま)-- みどり会企業との関わり方、SLQDC の考え方が大変分かりやすかったです。
- 製造業では 3S ・5S の効果は顕著に出る業種だと思います。効果が目に見えると活動も勢いづくでしょう。
- コマツがサプライチェーンでのコンプライアンス担保が出来ている内容であった。「農耕民族型購買」の強さが分かり、参考になった。
- SDGsの理解と今後の中小企業との関わりを検討する理由が分かった。
- 今後、当社の様な業務の中で、どの様な関わりができるのか。考えていくことになるでしょう。
- SDGsについて更に学びたくなった。環境方針等の改訂の参考にしたい。
- 年一回の全社員での環境教育勉強会や仕入れ先を巻き込んだ説明会など大変参考になりました。
- 経営目標を達成するためのツールとして、QMS、EMS を利用しているスタンスが明確で、素晴らしいと思いました。
- ISO9001 とエコステージの内部監査を同時に行っているとのこと。当社もそれを計画しており、詳しく聞きたかった。「認証のために活動するのではなく」という考え方に大変共感。
- 自律神経のある職場は当社も実現したい目標です。
- 具体的改善活動の中味が分かった。自律神経、極ピカ、5W1H体質改善など印象に残る内容であった。
- エコステージを導入することによって、会社自体が大きく変化し売上も伸びた。社員一人ひとりの意欲が感じられ、一本化があったと思う。
- 営業中心であっても多くの改善が可能だと思わせる事例であった。
- 減らす改善から増やす改善への考えは参考にしたい。内部監査研修受験も考えたい。
- 販売会社の活動事例で、生産現場が無い中で紙ごみ、電気の第1ステップから実務テーマへと変わっていったところが良く分かりました。
- 口だけでなく実を伴った企業活動をされており、地域とのつながりを持ち、とても感心した。大変面白い。
- 社会貢献が企業の成長につながるモデルで良かったと思います。
- サービス業ならではの観点から、お客様、地域とコミュニケションに重点を置いている事が、成功している良い例と参考になった。人材育成の勉強会もユニークで必要と感じた。
- エコステージを使って人材育成を目指したことが良く分かった。5S を積極的にやることが変革の基点になったことを知った。
- 技術力、技能伝承に着眼点を持った内容が素晴らしいと思いました。
- 事業承継及び人材育成について参考なりました。 5S活動も見習うべき点がありました。
- エコステージの役割を良く知ることが出来ました(実効性高い)。
- 教育が大切だと思いました。大人になってから環境について教育を受けるのも必要ですが、子供の頃から意識させるのは大事なので、企業活動がそういう方向につながるようにできないものかと考えさせられました。
- SDGsなどの注目されるキーワードに対する講演から大変参考になる事例まで、幅広い内容となっており、とても充実した時間となりました。