2014年環境経営講演会 ダイジェスト

CSR(企業の社会的責任)からCSV(共有価値の創造)へ
― 社会と共有できる価値の創造と中小企業の競争力強化 ―

2014年2月18日(火)、東京都千代田区の東商ホールにて、第8回目となるエコステージ協会主催の環境経営講演会が開催された。「CSR(企業の社会的責任)からCSV(共有価値の創造)へ」と題し、CSVに関する基調講演や環境科学の専門家による特別講演が行われ、社会貢献や品質向上に結びついた優秀事例も紹介。また、昨年エコステージ協会設立10周年を迎えたことから、エコステージの発展に寄与された認証取得組織の特別表彰も行われ、10年間の歩みを振り返った。

<Ⅰ.開会挨拶>
エコステージ協会 理事長
古賀 剛志

冒頭、中国と米国が世界の気候変動による影響を緩和する共同声明を発表したことに触れ、全世界的規模の環境対策がさらに進み、日本企業も大きな影響を受けると予想。今後の企業は、社会的責任だけの環境経営に取り組むという視点から脱却し、自社のビジネスを支えるために環境経営を活用していくべきと強調。本講演会のテーマの趣旨を紹介し、開会を宣言した。

古賀 剛志
<Ⅱ.来賓挨拶>
経済産業省 中小企業庁 経営支援部 小規模企業政策室長
鈴木 洋一郎

中小企業、特に個人事業主を含めた小規模事業所では、ベンチャー企業のような成長志向型活動だけでなく、地域に根づいた持続的経営を望む企業が増えていると指摘。経済産業省として事業の持続的発展を図る小規模企業振興基本法を策定するとともに、環境経営が今までの事業の見直しや強化になり得ると考え、エコステージ協会とさまざまな連携や情報交換を図っていくと語った。

鈴木 洋一郎氏
<Ⅲ.10周年記念基調講演>
「CSR(企業の社会的責任)からCSV(共有価値の創造)へ」
エコステージ協会 評価基準委員会委員長/京都大学大学院地球環境学舎 特任教授/
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 部長
矢野 昌彦

CSVは企業価値と社会の利益を同時に最大化することであり、「今後の企業の持続的成長には“守り”のCSRだけでなく、“攻め”のCSVがより重要になる」と解説。エコステージではCSR経営認証と経営革新ステージによってこの二つを段階的に支援する仕組みがあることを説明し、複数の海外事例を挙げ、大手企業にできない中小企業ならではのCSVの取り組みを紹介した。

矢野 昌彦
<Ⅳ.特別講演1>
「CSRの進化に向けて」
富士ゼロックス 前社長/ 国連グローバル・コンパクト ボードメンバー
有馬 利男

企業活動が社会に与える影響は、グローバリゼーションとともに拡大しつつあり、「企業はかつてのような経済性に専念する時代ではなくなってきた」と指摘。財務情報と非財務情報を統合する「統合レポート」についても言及し、CSRは企業経営の核心的な課題であり、今後は社会的課題を解決するビジネスモデルが必要とされ、その取り組みの中からCSVが実現できると展望した。

有馬 利男
<Ⅴ.特別講演2>
「バックキャスト思考から見えてきた新しい企業価値」
東北大学大学院 環境科学研究科 教授
石田 秀輝

ネイチャーテクノロジー創出システムの研究から、今のビジネスに欠けている視点を解説。限られた資源の中で魅力的なサービスを創出するには、現在の価値観を原点に将来を予想する「フォアキャスト」でなく、未来を起点に制約がある中でも心豊かな暮らしを想像する「バックキャスト」の思考回路が重要であると説明。「努力によって自らが成長でき、愛着や楽しみを見つけられる自立型のテクノロジーやサービスが求められる」と語り、新たなイノベーションのあり方を示唆した。

石田 秀輝氏
<Ⅵ.10周年記念 特別表彰>

エコステージ協会設立10周年を記念し、以下の認証取得第1号および最高位ステージ組織の特別表彰が行われた。 表彰された7社を代表し、有限会社サーブ様は「今後も環境活動を続け、エコステージに取り組んでいきたい」と環境経営への意気込みを語った。また、表彰式後に峯崎全国事務局長より、エコステージ協会自らも、社会貢献活動の一環として植林活動へ参画することが発表された。

エコステージ
認証取得第1号

有限会社 サーブ様
化学物質管理システム
認証取得第1号

株式会社 赤阪鐵工所様
グループエコステージ
認証取得第1号

小松共栄工業協同組合様
ソーシャルステージ
認証取得第1号

株式会社 弘久社様
有限会社 サーブ様 株式会社 赤阪鐵工所様 小松共栄工業協同組合様 株式会社 弘久社様
経営革新ステージ
認証取得第1号

ツカサ電工株式会社様
最高位ステージ
認証取得組織(ES4)

株式会社 デンソーユニティサービス様
最高位ステージ
認証取得組織(ES4)

京三テックス株式会社様
受賞組織の皆様と
古賀理事長
ツカサ電工株式会社様 株式会社 デンソーユニティサービス様 京三テックス株式会社様 受賞組織の皆様と古賀理事長
<Ⅶ.優秀事例に学ぶ>
「オンデマンド印刷を核技術とした本業と社会貢献の両立」
株式会社 弘久社 代表取締役社長
平野 芳久

ソーシャルステージの好例として、印刷業を営む弘久社の事例が発表された。社長自身が21年前に経営学者ピーター・ドラッカー氏と出会ったのをきっかけに、本業と社会貢献の両立を目指した経緯を紹介。地元大学と連携したプロジェクトや地域に密着したユニークな取り組みを挙げ、「単に“手を差し伸べる”だけでなく、互いの経営資源を活用することが必須の課題」と強調した。

平野 芳久氏
「エコステージ3活動を通じた、品質革新賞への取組み(受賞)」
橋本総業株式会社 常務取締役
伊藤 光太郎

エコステージ3へ挑戦する中、品質革新賞を受賞した橋本総業の事例が発表された。建築設備の卸業を営む橋本総業は、組織力強化のためにエコステージを導入。その仕組みを軸に、工事業者、販売店、卸売業者、メーカーの四者が一体となって取り組んだ「みらい活動」を紹介し、CSVの一環として「互いのビジネスが向上する関係づくりを築き、業界全体の発展に努めていく」と語った。

伊藤 光太郎氏
<Ⅷ.閉会挨拶>
エコステージ協会 全国事務局長
峯崎 哲

本講演会の総評とともに「エコステージは環境だけではなく、品質改善を含めて統合的に取り組めるツールである」と総括。従来のエコステージ認証に加えて、CSR経営認証、経営革新ステージと「攻め」の企業経営をよりサポートしていくと今後の方向性を語り、講演会を締めくくった。

峯崎 哲
<当日の模様>
写真1 写真2 写真3
写真4 写真5 写真6

来場者アンケート集計結果より

-来場者にご記入頂いた多数の回答の中から、いくつかご紹介します。(原文のまま)-
Q:10周年記念講演(矢野昌彦講演)に関して
  • 「1action 2Value」についての47の事例は大変参考になりました。
  • CSV(攻め)とCSR(守り)のバランス実現で持続的成長を狙うという事がおもしろかった。
  • CSRだけでなく、共有価値の創造というCSVの考え方は非常にポジティブな印象を受けました。
Q:特別講演①(有馬利男講演)に関して
  • 社会の課題をビジネスモデルとして社内で検討してみようと思った。
  • 守りのCSRと攻めのCSRと言ったCSRの多様性は参考になった。
  • 企業としてのステージに合わせた「進化」を進めていかないといけないと改めて感じました。
Q:特別講演②(石田秀輝講演)に関して
  • 「エコ」について、供給・消費の両面で深く考えなければいけない事を痛感!バックキャスト思考をもっと学んでみたいと思います。
  • ネイチャーテクノロジー創出システムについて、今後自分の活動にも取り組みたいです。
  • エコについて進めていくと時々疑問に感じることがあった。その様なことに対して、説明をしてもらった感じだった。
Q:優秀事例に学ぶ①(平野芳久講演)に関して
  • 企業とは何かをよく考えて活動している事が良い。自社もそうしていきたい。
  • アイディア×地域(社会)×大儀の掛け合わせ(活動)が大きな実を結ぼうとしていて感動いたしました。
  • 産学の結びつきで社会貢献を実践出来ている好事例として参考になった。
Q:優秀事例に学ぶ②(伊藤光太郎講演)に関して
  • エコステージを経営管理手法にうまく活用している事に感心しました。
  • 教育活動、職場のスキルアップ等、地道な活動からの成果、参考になりました。
  • 取引先様へのビジネスの場、ネットワークを向上させることにより自社の売上向上に繋げると言う手法は大変素晴らしいと感じました。
ご意見・ご要望・ご質問
  • 製造業に働くものとして限られた資源を有効にかつ大切に使うのは我々の使命である。一方、エコ活動は無限であり、更にその活動をレベルUPしていきたい。
  • 今回の優秀事例はどちらも内容のあるものであった。現状のままではダメであり、環境と企業の共存の必要性を再認識した。エコステージをスキルアップすることで、社会的評価も得られると思った。
  • ステージ1の取得に向けて活動しております。成果が見えるよう、今回の事例を参考にしたいと思います。ありがとうございました。
  • とても参考になりました。自社で新たに取り組めることは何なのかを持ち帰り、ディスカッションを実施します。
  • CSRとCSVの考え方は、更に複雑化していると思っていましたが、今日の説明で理解が進みました。これから実例を増やして欲しい。

このダイジェストのPDF版はこちら