活用事例(1)東京都港区
インタビュー
『確認支援制度』の客観的な評価の活用によって、港区らしいEMSを推進する。
港区は「自治体エコステージ」の「確認支援制度」を導入し、EMS診断、訪問評価を受け、2010年2月に第三者評価委員会の承認を得ました。自治体エコステージの導入の経緯とその効果について、港区のEMS推進リーダーであるEMS事務局の事務局長、今福芳明氏にお聞きしました。
港区では、EMSについて今までどのような取組みを行ってきましたか?
今福 港区は、2000年に港区環境率先実行計画を策定し、これを実行するため、翌2001年にISO14001の認証を取得しました。その後、本庁舎・各支所だけでなく、福祉会館、児童館などの庁外施設へも対象範囲を拡大しました。また、取組み内容も紙、ごみ、電気などのムダをなくすエコオフィス活動だけでなく、区有施設での打ち水や緑のカーテンの実施など、常に環境負荷低減を意識した事務事業の執行まで取り組んでいます(下図:資料1-港区におけるEMSの経緯)。
約8年間も続けていたISO14001の認証を見直した理由は何でしょうか?
今福 実は、港区はCO2の排出量が23区の中で一番高く、2009年に策定した港区環境基本計画では、2020年度のCO2排出量を1990年度比で25%削減する中期目標を掲げ、これへの対応が急務となりました。また、改正省エネ法では適用対象の施設が一気に広がりましたが、まだISO14001の対象となっていない施設も多く、すべての施設で認証取得するには手間もコストもかかってしまう。そこで、次のステップとして、ISO14001の認証取得にこだわらず、今まで築きあげたPDCAのしくみを活用しながら環境活動を推進した方が効率的と考え、自己適合宣言したわけです。
「自治体エコステージ」を導入したきっかけは、どのようなものですか?
今福 ISO14001の認証を返上するわけですから、区民や事業者へ説明する際に説得力に欠けるのではないかという職員の声もあり、初めてのことで不安もありました。とくに、今まで港区の各部同士で内部監査してきたのですが、そのままでは緊張感が薄れ、馴れ合いに陥る可能性も否定できません。そんな悩みを解消するために、以前からコンサルティング業務を委託していた知識経営研究所に依頼し、内部監査をアウトソーシングする方法に切り替えました。その後、自治体エコステージであればISO14001と整合性も高く、確認支援制度なら第三者評価委員会の客観的評価である意見書を受けられると知り、この制度の導入に踏み切ったのです(写真下:資料2-自治体エコステージ『確認支援制度』の意見書と付属書)。
『確認支援制度』の具体的な内容を教えてください。
今福 港区では確認支援制度を内部監査として受けました。具体的な内容の一つは書類のチェックです。専門の評価員が各所属を訪れ、それぞれで作成した書類がEMSのルール通りに作られているかどうか、客観的な評価が行われました。とくに、法令等に基づく記録や書類は、専門家の視点から順守徹底されているか確認されました。もう一つは、各所属の担当者との面談です。各所属の課長クラス、係長、さらに必要に応じては部長クラスまでインタビューが行われ、書類に書かれていない部分まで踏み込み、日常のオフィス作業や事務事業でどのような活動が行われているか入念なチェックを受け、今までにない細かな指摘を受けました。
自治体エコステージ導入によるメリットには、どのようなものがありましたか?
今福 改善すべき点が具体的に分かったことは重要でしたが、それ以上に良かったのは、自分たちが気づいていなかった独自の取組みを評価されたことです。たとえば、港区では、全書籍のICタグ管理を始め、書籍等のピッキングを90%削減し、資源の有効活用とコスト削減を図っています。また、児童館を利用する子どもたちが環境活動に取り組んだ場合、施設独自の「エコポイント」を交付し、ポイントを館のお祭りのチケットに還元するしくみをつくり、子どもたちの環境配慮行動の促進を図っています。こうした活動は、当たり前に行ってきたことなので、かえって職員同士の評価では気づかないことが多く、第三者の視点により評価の対象となりました。これをきっかけに、今後は優秀な取組みに対する表彰制度も検討しています。EMSの取組みに関しては、マイナス面だけでなくプラス面まで明確になったことがメリットと感じています。また、専門家の内部監査という形式で実施したことにより、職員の監査事務負担が大幅に軽減され、かつ、法令の順守確認はより強化することができた点もメリットと感じています。
最後に、今後の予定をお聞かせください。
今福 自治体エコステージによって予想以上の成果が出たので、今後もこの制度は続けていきたいと考えています。どこの自治体もISO14001を取得したものの、その運用をどう続けていくか大きな悩みを抱えているのではないかと思います。そのとき、より負担の軽いEMS自治体エコステージに移行したり、あるいは私たちのように確認支援制度によって客観的な評価を受けるのは有効な方法だと実感しました。自治体におけるEMSの内部牽制や説明責任を確保する手段として、今後ますます注目されるのではないかと考えています。
活用事例(2)神奈川県茅ヶ崎市
EMS導入の経緯、成果等
茅ヶ崎市では、2005年3月にISO14001の認証を取得し、以来5年間、PDCAサイクルに基づくEMSを運用し、認証登録を維持するとともに、環境配慮行動を推進してきました。
その結果、特に省エネルギー・省資源において、ISO14001導入前と比較し、大幅な削減効果が得られ、また、外部審査が定期的に入ることにより、活動の定着に一定の成果を挙げるに至りました。
その後、ISO認証取得自治体として5年を経た今、低炭素社会づくりの国家的戦略の影響、および自治体EMSの全国的動向等の変化により、茅ヶ崎市EMSの推進は、新たな局面迎えつつあります。
自治体エコステージ導入・活用してみた感想
現EMSのシステム設計が、ISO14001の規格要求事項を確実に満たすしくみとなっており、これまで、ISO14001の規格要求を満たしているので、外部審査では適合とされており、システム設計自体の改善に意識が向きませんでしたが、今回の現状調査で実態との不具合などが明らかになったことは、見直しする上で大きな視点となりました。 とくに、事務局集中型の管理体制になっていることも、指摘を受けて初めて自覚しました。
また、事務が繁雑で事務量が多いことや、ISO用語が難解であること、文書のボリュームが多く理解しきれないなど、取り組む側の率直な意見も取り上げられ、改善提案に活かしていただいたことも、適合性をPRする外部審査とは異なり、見直しを考えていた本市にとって望ましい形であったと思います。 システム設計だけでなく、運用管理の実態についても明らかになり(各課での法改正動向の確認の仕方など)、これまで気づかなかった現状と課題を整理することができました。
2010年度のEMS・環境活動の目玉、PR
- ISO14001の認証を返上し、改正省エネ法、地球温暖化対策実行計画と管理体制を整合させた簡素でわかりやすい独自のEMSを構築し、管理範囲を市の全公共施設に広げ、より積極的に市域の温室効果ガスの削減を図ります。
- 環境活動としては、電気自動車を3台導入するとともに、地元企業であるアルバックと共同で、太陽光発による電気自動車急速充電システムを構築し、電気自動車の普及を推進していきます。当急速充電器については市営駐車場に設置し、誰でも無料で使用できるようになります。
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藤沢市、寒川町と連携し、2市1町で「湘南エコウェーブプロジェクト」を立ち上げ、広域で地球温暖化対策を推進しています。12月は温暖化防止月間として、啓発チラシを付けたティッシュを配布しました。また、12月10日を統一行動日として、イルミネーションライトダウンキャンペーン、アイドリングストップ・ノーカーデー推進キャンペーンを実施しました。来年度も引き続き、連携して地球温暖化対策を推進します。
また、当プロジェクトの一環として、希望者または、イベント時に紙リサイクルボックスを無料配布し、資源循環社会を推進します。 - 緑のカーテンを市域に広げるため、市民にゴーヤの苗を300世帯(予定)分、無料配布します。
活用事例(3)長野県千曲市
EMS導入の経緯、成果等
2001年度に旧上山田町でISO14001を認証取得し、2003年度の1市2町の合併に伴い、小中学校を除く全庁の施設に対象範囲を拡大しました。
そして、2007年度に自己適合宣言を行い、客観性を確保するため、市民や事業者による内部環境監査を実施するほか、近隣自治体や大学との間で相互監査も行っています。
さらに、2009年度は、行政システムの効率的・効果的な運用を図るため、EMSと他の既往制度(予算制度、行政評価制度、人事評価制度等)との連携に取り組んでいます。
なお、2003年度から2007年度の5年間で約1,792tのCO2削減(15年度比37%削減)を実施しました。
自治体エコステージ導入・活用してみた感想
エコステージは自組織のシステムを補完しつつ、環境という切り口で経営改善を図るという考え方で構築されています。自治体エコステージでは、ISO14001等の第三者認証から自己適合宣言や独自EMSへ移行した自治体向けに確認支援制度というものを設け、その制度では改善提案も受けられるためEMSの改善が進みます。今回の取組みは、千曲市が抱える環境分野とそれ以外の行政システムの連携を図るという課題に合致していました(右図:資料3-システム連携による情報の流れ)。自治体エコステージにより、行政システムの連携が図られ、効率の良い行政経営ができることを今後もめざします。また費用面で自治体エコステージは、ISO14001認証取得による運用費用より安価で、内容も充実しており、コストパフォーマンスにも優れています。
2010年度の環境活動の目玉、PR
(1)生物多様性保全の推進 (環境省交付金事業)
- 千曲市版レッドデータブックの調査・作成
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姨捨棚田ビオトープの整備
- 実物を見るRDB 「希少種保全園」の整備
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希少種の移植、種の系統を保全(デンジソウ、ミズオオバコ等)
- 里山整備
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希少種の生息地域の整備及び種子の採取・は種・育成 (ベニバナヤマシャクヤク、オオヤマカタバミ等)
千曲市環境市民会議のメンバーと協働で観察会を行うなど、パートナーシップ型事業として推進。
※事例内容は2010年7月時点の情報です。